日本のここらで。

自分のいる日本のここらへんで起こった事を記します。

テスト2 蝉の話

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昨夜、部屋に帰ると蝉が死んでいた。最初は死んでいるとはわからなかったが、恐る恐る写真など撮ってみても動かないから、死んでいるものと判断した。
自分について部屋に入って、そのまま行くあてもなく死んだのか。
しばらく様子を見たが、やはり鳴くことも動くこともない。

一夜明けて、このままにしておくわけにもいかず、マンションの裏に植え込みがあるので、そこに置いて土に還そうと思った。

蝉はクリーニングから返ってきたコートの白いカバーに取り付いており、潰さないように脚を引き剥がして、キッチンペーパーに包んで部屋を出る。

エレベーターを降りてマンションの裏に回ると、赤煉瓦に囲まれた殺風景な植え込みがある。背の低い木や草が並んでいるうち、アロエの類いと思われる草の根元、固い土の上をそれと定めた。

左手に持ったキッチンペーパーを開いてゆくと、しばらくあって、やがて包みの奥から蝉のなきがらはポトリと土の上に落ちた。

やれやれと思い、腰を上げようとすると、先ほど落とした蝉のなきがらから1センチも離れていない土の上に、何か固まりの様なものがある。来た時はアロエの葉に隠れていたようだ。

再び腰を下ろして見てみると、どうやらこれも蝉のなきがららしい。先程落とした蝉の腹の部分かと思ったが、こちらにも頭らしきものと腹の一部が見える。中身はすっかり空になってしまっているが、これもまた、明らかに蝉だ。

気がつけば、植え込みの根元に二匹の蝉の殻が並んでいる。
なにやら、自分が蝉のなきがらを此処まで運ばされたかのような心持ちがした。
そもそも、先の蝉はいつから自分の部屋にいたのか。本当に自分について部屋に入ってきたのだろうか。

何か誤っているのかと思い、やはり写真に収めた。
先ほど見返したが変わりは無かった。
これが今年見た最後の蝉の話だ。